また仏舎利塔を眺める。
おっ、やっと一時間たった。
廊下にストレッチャーが置きざり。
妻が運ばれたやつだろうか?
金属のポールが無機質に光っている。
やはり時間が気になる。
確実に時は流れている。
妻の手術も確実に流れている。
逆戻しは絶対できないのだろうか?
ひたすら成功を祈るしかない。
PM5:20 また仏舎利塔を撮る。
もう外は日が暮れかけている。
予定では2時間かかると言われていた。
もうすぐ、のはず。
PM5:55 予定の時間がかなり過ぎた。遅い。心配になる。
入口まで行き一枚撮る。
中ではどうなっているか知る由もない。

PM6:27 ソファに座っていると突然音がして、
ストレッチャーがあっという間に通り過ぎた。
「終わった?」
一瞬のことで確信が持てなかったのでそのまま待っていたら、
先生が僕を呼びに来た。
「無事予定通り終わりました。」
まずはその声にほっとする。
摘出された器官を撮影させてもらう。
それほど動揺はない。
というかコレが妻の肉体の一部という実感が持てないほど、
目の前の肉片は「モノ」に見えた。
左の球体が大きくなった筋腫。
一通り先生の説明を受けて、妻のところに行く。
まだ麻酔がきれてないので目はうつろだ。
「成功したよ。よくがんばったね。」と声をかける。
手術前に妻は先生に約束させていたらしい。
「今見せても多分覚えてないだろうけど。」
証拠にと一枚撮った。
後で聞いたら、やはり覚えていなかった。
麻酔が徐々にきれてきたらしい。
その後は手術後の苦しみの戦いが始まる。
「寒い‥」とぶるぶる震え始めた。
「イタイよー、イタイよー」と声を絞り出す。
近くにいても何もしてやれない情けなさ。
ベッドのガードをにぎって、苦しさを耐えている。
「がんばれ!」
看護婦さんもいないし、この機械の数値は正常なのか気になる。
相変わらず妻は苦しんでいるし、周期的に吐き気をもよおしている。
あまりに苦しそうなので看護婦さんを呼ぶ。
痛み止めを打ってもらうと少し落ち着いた。
PM9:30 看護婦さんに駐車場が閉まるので帰った方がいいと言われる。
普通手術の日は家族が付き添わないか?
でもこの病院は「完全介護なのでお帰り下さい」
という貼り紙までしている。
実際看護婦さんが来ても何をしていいやらでおろおろするばかり。
かえって邪魔する感じだ。
家には娘一人なので、忍びないが帰ることを告げる。

駐車場から一枚。
長い一日だった…


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