2月15日。その日は私の妻の手術日だった。
結婚してから13年目にして初めての手術。
病名は子宮筋腫と卵巣のう腫。
約3ヶ月前に病気が判明して、手術に同意してこの日を迎えた。

僕自身、20代前半で母、父、祖父と立て続けにガンで肉親を亡くし、
その度に切除された内臓を見せられ、結局は死んでしまったという経験がある。
だから手術や病院には嫌な思い出しかない。病院は死の匂いがする。

しかし今回は手術自体の心配いらないということだ。
それで妻に手術を写真に撮っておこうかと提案したところ、すんなり同意してくれた。
写真に撮って残して後で確認することで、いろんな意味で本人も納得できる。

この写真はこうしてネットで公開することも一応前提に考えた。
僕はあまりドキュメンタリー写真は得意ではない。
せめてあまり作為が出過ぎないように配慮したつもりだが結果はどうだろう?
そのために機材もAFカメラに50ミリレンズ一本だけにした。
ピントや露出のことを気にしないで素直に撮れるカメラでないといけないと考えたからだ。

それにしてもこんなに長い一日になるとは…


PM1:30 病院の駐車場に到着。
「あの病棟の中で妻はどんな気持ちでいるのだろう。」
ふと思い、気分も重くなる。
カメラを持ったまま病院へ入る。
少し気がひける。
妻の病室、206号室へ向かう。

病室へ入る。
同室の方に、「昨夜は眠れんかったみたいよ。」と言われる。
見ると目が赤い。
「やさしくされると涙が出る。」と言った。
看護婦さんもみんなやさしい言葉をかけてくださるらしい。
子宮という女性にとって大切な器官を摘出されるのは、
やはりつらいだろう…。

話してる間にも、点滴や検温や注射など、
着々と手術の準備は進む。
僕にできることと言えば、
「絶対大丈夫。成功する。先生を信じて悪いところを直そう。」
などとなぐさめを言うことしかない。
「木村さーん、それじゃあ行きましょう。」
その時は唐突にやってきた。
いっしょにエレベーターで手術室の手前まで。
看護婦さんにうながされて、
「がんばってな!」
「うん。」
見送りながら、とっさにシャッターを切る。
待合室の時計。
手術室に入った時刻をとりあえず撮る。
待合室に、まだ手術中の方のご家族がいる。
きっと祈る気持ちで手術が終わるのを待ってるのだろう。
僕も窓の外を眺める。
太いパイプが牢屋を思わせる。
裏山の頂には銀色の仏舎利塔が光っている。
ちょっと心の中で祈る。

ソファに腰掛けて、買ったばかりのCD「ラブサイケデリコ」を聴く。
こんな時に聴くとヤケクソに調子のいい歌に思える

少し聴いてやめる。

目の前をパチリ。
「盗難事故防止 油断大敵!」
病気で苦しんでいる人たちの貴重品を盗む人が多いそうだ。
世の中最悪。
先の患者さんの手術が終わり、待合室は僕一人になる。
テーブルの上のきれいな造花を撮る。
ニセモノの美しさが気に入らないが、
造花のおかげ助かる花もあるのかなと、ふと思う。
腕時計を撮る。
まだ一時間もたっていない。
長く感じる。

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